夏ともなると、化粧品CMは熱い!テレビのブラウン管に数々の鮮烈ともいえるCMが時に爽やかに・・時に妖しく・・時に溌剌と爪痕を残していった・・
(画像:写真AC)
化粧品夏のキャンペーン黎明期(1971年~75年)
- 71年夏、マックスファクターが初の夏のキャンペーンタイアップCMを制作。キャッチコピーは〝Summer Creation〟CMソングはグレン・ミラー楽団の専属歌手として米国で活動をしていたジェーン・シェパードさん。タイアップ曲「Summer Creation~夏の日の出逢い~」のヒットで日本でも有名歌手となり、来日した際、千昌夫さんとの共演がきっかけで翌年の72年結婚。一時期、カタコトの日本語がウケてタレント活動もしていた。活動期間は現在も放送中の「新婚さんいらっしゃい!」の3代目ホステス役も見事に熟していた。離婚後はしばらく日本に在住していたが、千さんから慰謝料の一つとして移譲された豪邸の名義問題で立ち退きを余儀なくされ現在はハワイ在住。離婚騒動中は日本のマスコミはジェーンさんに対し同情的だった記憶がある。日本の水に馴染もうと努力されていた姿をこの人物を通して幼心にも感じたものだ。CMモデルは不明。
- 75年資生堂は夏のキャンペーンCMを2作制作。2作ともCMソングを歌っていたのはジャズ歌手の中本マリさん1作目のキャッチコピーとCMソングタイトルは「触れてごらん青い風に(作詞:荒木とよひさ/作曲/編曲:森田公一)」と2作目のキャッチコピーとCMソングは「描いてごらん海の色で(作詞:八坂裕子/作曲:森田公一/編曲:横内章次)」。この2曲は2作目がA面で1作目がB面(現在で言うカップリング)という一枚で二枚美味しいシングルでもあった。1作目のCMモデルは181㎝の眩い肢体を誇った江崎かつみさん。2作目はマージー・ホワイトさんとブレイク前の少女の面影残すアグネス・ラムさんだった。2作目CMは70年代の資生堂CMがまとめられUpされた動画の1:45で確認できる。3:46から流れるオーデコロンモアのCMソングを町田義人さんが歌っている歌も映像もグッとくる。他にも当時の息吹が感じられるCMが多く必見!テーマから逸れて御免!
※1971年は昭和46年
※1975年は昭和50年
76年夏・南南西の風資生堂vsサラダガールカネボウvsコーセーの夏
- 資生堂76夏のキャッチコピーは〝南南西の風・色いきる〟CMソングはなくスティールドラムの軽快な音楽が流れ、CMモデルのマリー・アスキューさんが夏のヴァカンスを満喫しているようなCM。ロケ地は何処なのかは不明。スティールドラムが登場しているのでカリブ海に面したキューバかスティールドラムの発祥地のトリニダード・トバゴ辺りだと思われる。
- カネボウのキャッチコピーは〝SALAD GIRL〟CMソングはゴダイゴの「僕のサラダガール(作詞:奈良橋陽子/作曲:タケカワユキヒデ/編曲:ミッキー吉野)」彼らにとってデビュー曲でもあった。〝SALAD GIRL〟の意味は「今夏話題になるクリーン&フレッシュなナウな女の子達全員」に贈られたネーミングとのこと(「僕のサラダガール」Wikipediaより)CMモデルはレジナ・コニーゴさん。
- コーセーのキャッチコピーはなんと3つ〝いい日だ。コーセーの夏〟〝いい日だ。肌色が涼しそう〟〝いい日だ。君がまぶしい〟CMソングはジャッキー吉川とブルー・コメッツのメンバーだった井上大輔(当時は忠夫名義)さんの「真夏のおまえ(楽曲の詳細不明。推測だがプロデュースにも秀でた人物だったためご本人による楽曲の可能性高し。)」レコード化されていないのかもしれない。CMモデルは杉本エマさん。
※1976年は昭和51年
77年夏・働く女性の応援歌資生堂と溌剌水着の夏目雅子登場カネボウと大きい波のコーセー
- 資生堂77夏のキャッチコピーは〝サクセス サクセス〟CMソングはダウンタウン・ブギウギ・バンドの「サクセス(作詞:阿木燿子/作曲:宇崎竜童/編曲:千野秀一)」楽曲を手掛けた宇崎さん率いるツナギを着たリーゼント姿のダウンタウン・ブギウギバンドが歌うことに当初、難色を示した資生堂だったが、女性の社会進出という言葉が盛んに言われ始めたこともあり、社会の荒波を強かに巧みに泳ぐ女性たちの力強い応援歌というコンセプトに彼らが歌うべきとなり大ヒットした。CMモデルはティナ・ラッツさん。資生堂側から歌詞にサクセスというワードを入れて欲しいという要望で阿木さんと宇崎さんは大胆にもタイトルにしてしまいさらにB面(カップリング)のタイトルは「愛しのティナ」タイトルのティナとはモデルを務めたティナ・ラッツさんを想定し楽曲として作ったそうだ。恐るべき夫婦だ!
- カネボウのキャッチコピーは〝Oh!クッキー・フェイス〟〝日に焼けない小麦色〟CMソングは英国出身歌手のティナ・チャールズさんが歌った英語詞の「Oh!クッキー・フェイス(作詞::Biddu Appaiah/作曲:佐藤健 後にCMモデルの夏目雅子自身もカバー訳詞は伊藤アキラ)」CMモデルは言わずと知れた夏目雅子さんである。このCM登場時に19歳の彼女の水着姿に度肝抜かされた青年諸氏がどれほどいただろうか。当時の女性たちより男性たちが歓喜してしまったCMではなかろうかと思う。このCMが大成功したことでカネボウ夏のキャンペーンはこの路線がしばらく続いていくのである。そしてその後の夏目雅子さんの目覚ましい活躍は昭和を生きた人たちにとって鮮烈に脳裏に刻まれたことであろう。昭和60年(1985年)急性骨髄性白血病による肺炎のため27歳の若さでこの世を去った。
- コーセーのキャッチコピーは不明。CMソングはペドロ&カプリシャス「こんどの波は大きいぞ。(作詞:伊藤アキラ/作曲:あかのたちお)」この曲に関してはシングルリリースされたのかは不明。2020年にヤフオクで当時、宣伝用のカセットテープが出品され落札されている(価格は割愛)。カセットにはタイトルとペトロ&カプリシャス、作詞、作曲者名とコーセー化粧品のクレジットが入っているため、化粧品の購入者に配布されたものか、もしくは懸賞などのノベルティグッズの可能性も考えられる。CMモデルは小麦色の肌が眩しいコーラ・ヨーカムさん。
※1977年は昭和52年
78年夏・時間よとまれ資生堂vsメッシュ水着の17歳カネボウvsあだ名はマスカットコーセー
- 資生堂78夏のキャッチコピーは〝時間よ止まれ まぶしい肌に〟CMソングは矢沢永吉さんの名曲「時間よ止まれ(作詞:山川啓介/作曲:矢沢永吉/編曲:)」CMモデルはなんとっ!5名のモデルで結成されたパシフィックガール(藤田恵弥子さん、土屋名美さん、林秀子さん、堀川まゆみさん、ロリアン・レオンさん)波打ち際を5人で横並びで歩くシーンはテレビCM映像史に残るぐらいのインパクトであった。
- カネボウのキャッチコピーは〝水のいらないパウダーケーキ〟CMソングはコーラスグループ・サーカスのこれまた名曲「Mr.サマータイム(作詞:Pierre Delanoe/作曲:Michel Fugain/訳詞:竜真知子/編曲:前田慶男)」フランスのミッシェル・フュガン&ル・ビッグ・バザールが1972年(昭和47年)にリリースした「Une Belle Histoire~愛の歴史~)」の日本語カバー曲。CMモデルは当時17歳だった服部まこ(現在・真湖)さん。小学時代、学校の校門の対面に薬局があり、店頭のウインドーに服部まこさんがなんと〝手ブラ〟で無邪気に微笑んでいる広告ポスターがデカデカと飾られ目のやり場に困った思い出がある。彼女はCM内で白の粗い網目のメッシュの水着姿(黒メッシュVerあり)まで披露しており驚かされるばかりだ。語学(英語、スペイン語)に堪能なこともありフジTVの「夜のヒットスタジオ」では海外からの衛星中継のレポートや海外アーティストのインタビューなどで活躍していた。女優としても1980年(昭和55年)TBSで放送された堺正章版「天皇の料理番」では、主人公・秋山篤蔵を誘惑し翻弄する小料理屋の女将役を艶っぽく演じたがこの時彼女はまだ19、20歳だった。実年齢を知ると鳥肌モノである。さぁ・・カネボウ79夏はどーなることやら・・
- コーセーのキャッチコピーは〝あのこのあだ名はマスカット〟CMソングも同タイトル「あのこのあだ名はマスカット」で歌っていたのはピーカブー&ムーン・ドロップス。楽曲についての詳細は残念ながら不明。CMモデルは五十嵐元子さん、セーラ・ロウエルさん。
※1978年は昭和53年
79年夏・燃えろいい女ナツコ参上!資生堂vsサマーチャンピオンカネボウvs2WAY SUMMERコーセー
- 資生堂79夏のキャッチコピーは〝ナツコの夏〟〝資生堂ナツコ〟CMソングは当時大人気ロックバンドのツイスト(ヴォーカル・世良公則)資生堂は77年夏のダウンタウン・ブギウギ・バンドの「サクセス」が好評だったこともあり、夏のCMソングは男性アーティストを連続して起用。世良さんの独特なシャウトと撮影当時まだ19歳だったCMモデルの小野みゆきさんの凛々しい顔立ちとマッチしてテレビCM映像史上に残る名作CMとなった。とにかく〝燃えろいい女・ナツコ〟の小野みゆきさんがカッコよすぎて小学時代の私の憧れの一人であった。真っ赤な車で颯爽と現れる〝ナツコ〟は〝眩し過ぎるお前との出会い〟そのものだった。当時彼女はCM撮影で水着着用を頑なに拒否したという都市伝説がある。広告用ポスターのみ水着姿を披露している。他社を含め数多のモデルさんたちを拝見させて貰ったが化粧映えする顔立ちNo.1だと私の中で勝手に決定している。
- カネボウのキャッチコピーは〝すぐつく よくつく〟〝一気にこの夏チャンピオン〟CMソングは名曲「Mas Que Nada~マシュ・ケ・ナダ~」のセルジオ・メンデス ブラジル'88の「SUMMER CHAMPION」。CMモデルの浅野ゆう子さんもセルジオ・メンデス・ブラジル88+浅野ゆう子名義で「サマーチャンピオン(作詞:伊達歩/作曲:セルジオ・メンデス&マイケル・センベロ/編曲:馬飼野康二)」をリリースし浅野さんVerもCMで使用されていた。彼女は少女時代から芸能界への憧れが強く、特に歌手を志望し小学時代から歌のレッスンを受けていたほどの努力家だった。しかし実年齢より大人びた容姿とそれに反して等身大の無邪気さのアンバランスさが、当時の日本ではなかなか受け入れ難いものがありアイドルデビュー後も「セクシー・バス・ストップ(作詞:橋本淳/作曲:Jack Diamond<筒美京平>/編曲:高田弘)」のヒットには恵まれたものの今一つメジャーになれず伸び悩んでいた。そんな時期に、CMモデルのオファーを受け初めての水着姿を披露した。彼女は自分が歌ったVerも受け入れられると思いきや、世間は彼女の抜群のスタイルの水着姿にばかり話題が集中し、歌手活動の起爆剤になることなくどちらかというと世間はセクシー路線を求めるようになってしまった。しばらく彼女は2時間ドラマの端役で数本出演し、このCMのイメージが薄れるのを待つかのように控えめな活動をしていた。1988年(昭和63年)に一大ムーブメントとなったトレンディドラマ「君の瞳をタイホする!」出演で好評を博し、同時期に人気女優となった浅野温子さんとともにW浅野としてファッションリーダー的存在になった。今も尚、女優・浅野ゆう子として現在に至る。CMソングの浅野さんVerを改めて聴くと巧い人だなと痛感させられる。本当に巧い!!90年代には資生堂のCMモデルも務めている。同時期に大人びた雰囲気で【時代と寝た女(写真家・篠山紀信氏 評)】と称された伝説のアイドル・山口百恵さんは立ち居振る舞いも大人びているというより老成したものがあり、年齢を重ねる度に異様な貫禄までも纏い根強い女性支持もあった。浅野さんの場合はあの抜群のプロポーションと端正な顔立ち・・もしかすると嫉妬の対象になり易いところがあったのかもしれない。年齢を経て実年齢と容姿のバランスが嚙み合ってブレイクしたのは自然の成り行きだったのだろう。
- コーセーのキャッチコピーは〝2WAY SUMMER〟CMソングは山本達彦さん「ある日この夏~two way summer(作詞:海友彦/作曲:山本達彦/編曲:松任谷正隆)」CMモデルはセーラ・ロウエルさんと同年、全日空沖縄〝トースト娘〟の愛称でキャンペーンモデルを務めた当時14歳のキャティさん。スレンダーなセーラさんとグラマーなキャティさんの対照的な二人がお揃いの黄色い水着姿が印象的なCMだった。山本達彦さん歌うCMソングの内容はある夏に2人の女性に恋をしてしまった男の苦悩を爽やかに歌っている。
※1979年は昭和54年
70年代化粧品夏のキャンペーンについてはここで終了。(誤情報、誤字、文脈に誤り発見時は随時、訂正致します。)次は80年代へつづく・・・